2014年 05月 01日
Recollection
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今日は私の思い出話です。
ちょいと長いですが、お付き合い下さいませ。


丁度30年前の、とある日曜日のこと。
当時高校2年生だった私は秋葉原の街を徘徊していました。
目的は携帯型ステレオカセットプレーヤーの購入のため。

当時は「携帯型ステレオカセットプレーヤー」なんて呼ぶ人は誰もいなくて、
携帯してカセットテープを再生する機器を総称して「ウォークマン」と呼んでいました。
ウォークマンはSONYの製品名ですが、
他社の製品でもウォークマンと呼んでいた、そんな時代です。

秋葉原を徘徊していたのは少しでも安く購入したかったから。
小さい店に手当たり次第に突撃して、他店の価格を提示しながら値段交渉をしました。
で、3・4時間ほど粘って1万2千円でSANYOのウォークマン(笑)を購入。
本家のウォークマンは私が購入したものよりもコンパクトで格好良かったのですが、
価格が2万円超と高額で手を出せなかったので、SANYOの一番安いやつで我慢です。
それでも、これで念願だった「音楽を携帯して外で聴く」という行為が実現するわけです。
すぐに箱から取り出して、音楽を聴いてニヤニヤしながら帰路につきました。

私が購入したSANYOのウォークマンは最廉価機種のためそれなりに大きくて、
今の感覚でいうと小型一眼レフのレンズを外したくらいでしょうか。
ズボンのポケットになんか絶対に入らない大きさなので、鞄に入れて使っていました。
高校時代は何処に行くにも持ち歩いて、いつも音楽を聴いていましたね。



 
話は変わります。

時系列がぐちゃぐちゃですが、SANYOのウォークマンを購入した2年前に遡ります。
当時中学3年生だった私は、級友のS君の家に遊びに行って衝撃を受けました。

S君はジャズ・フージョン系を聴くのが趣味でした。
中学生でジャズを聴くなんて、ちょっと変わっていますよね。
彼は級友達にジャズ・フュージョンの良さを熱く語るのですが、勿論、だれも耳を貸しません。
で、私が彼の熱意に負けて、彼の家に行ってジャズ・フュージョンを聴くことになりました。

彼の家にはそこそこ良いオーディオ機材が揃っていて、
次から次へと彼のお気に入りのアーティストのレコードをプレイヤーに掛けながら、
私にジャズ・フュージョンへの思いを熱く語ります。

彼の選んだ曲はなかなか良いものが多く、
ジャズ・フュージョンも有りだなぁ、なんて思いながら聴いていたのですが、
そんな私の反応と、それぞれの曲への感想を訊いていたS君が、
「mutoの好みの感じだと、この人のが良いかな。」
と取り出して聴かせてくれたのが、↓ このアルバムでした。

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松岡直也:「 Fall On The Avenue 」

一曲目の「 Touch the NewYork Pink 」を聴いた瞬間、私に衝撃が走りました。
そんな私を察して、さっきまで蕩々と蘊蓄を語っていたS君も、
何も言わずにニヤニヤしながら、したり顔で私の方を見ています。
結局そのままA面、B面すべて一気に聴いて、
この人の他のアルバムは無いのかとS君に催促する自分がいました。

それが私と松岡直也氏の音楽との最初の出会いでした。

松岡直也氏の音楽は「ラテンフュージョン」と呼ばれるものです。
独特のタッチのピアノ演奏による美しいメロディーラインと軽快なパーカッションのコラボが特徴で、
当時としてはとても斬新なものでした。

S君が所有していた松岡直也氏のアルバムを一通り聴いてすっかり気に入ってしまった私は、
数日後にカセットテープを数本用意して、レコードのダビングをして貰いました。
啓蒙に勤しんでいた彼が、喜んでダビングしてくれた事は言うまでもありません。

その後、ジャズ・フュージョン好きのS君とは別々の高校に進学し、
友人関係もそこで切れてしまったのですが、松岡直也氏の音楽はその後もずっと聴き続け、
少ない小遣いをコツコツと貯めてレコードを買い、コレクションを増やしていきました。

で、先の秋葉でSANYOのウォークマンを買った話につながります。
携帯型音楽再生機を手に入れた私は、松岡直也氏の音楽を聴きまくりました。
っていうか、松岡直也氏の音楽を携帯したくてウォークマンを買ったのです。
他にもスクエアやカシオペアなどのフュージョングループも聴きましたが、
それはせいぜい気分転換程度で、
当時の私が聴いていたのはほとんど松岡直也氏のアルバムです。
なので、松岡直也氏のラテンフュージョンは私の青春の思い出そのものなのです。

高校時代、とくに聴き込んだのは ↓ このアルバムです。
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「 夏の旅 」

このアルバムがリリースされたのは私が高校2年の時ですが、
松岡直也氏が日本の夏を表現したらこうなった、という感じのアルバムです。

高校3年の夏休みに「全国高等学校総合文化祭」というイベントに参加するため、
岩手県の一関市に行く機会に恵まれたのですが、
道中SANYOのウォークマンでずっとこのアルバムを聴いていて、
しかも岩手にはこのアルバムのジャケットみたいな風景が至る所にあって、
多感な時期の私の感性をかなり刺激してくれました。
今でもこのアルバムを聴くと、高校時代の思い出が蘇ってきます。

私が撮る風景写真には棚田や田園風景が多いのですが、
それはこのアルバムから受けた影響が多分にあるからだと思います。
「日本って良いなぁ」と、このアルバムの曲を聴いて心から思いましたからね。

30年も前にリリースされたアルバムなのに、
今聴いても古臭さは微塵も感じられません。

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で、なんで急にこんな思い出を話り始めたのかというと、
実は、松岡直也氏が4月29日にお亡くなりになったのです。
享年76歳だそうです。

↑ は2005年にリリースされた彼の最後のアルバムです。

かれこれ9年近く新曲をリリースしていませんでしたが、
二度と彼の新曲を聴くことが出来ないと思うと喪失感でいっぱいです。

彼が生前に発表したアルバムは、レコードとCDの形で全て所有しています。
とくに、高校時代に昼食のパンを1個減らして毎日80円ずつ貯金して購入したレコード達は、
私の青春の思い出として、押し入れに大切にしまってあります。
プレーヤーの無い今は聴くことは出来ないけれども、私の大切な宝物です。

彼の最後のアルバムのタイトルは「 SINCERELY 」。
日本語に訳すと「 心から 」という意味です。
このアルバムのタイトルと同じ言葉を彼に贈ります。


「 心から有り難うございました。そして安らかに。 」


故人の冥福を祈ります。

合掌。

by muto2100 | 2014-05-01 22:26 | その他 | Comments(0)


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